つけ麺という麻薬について

俺はよくつけ麺を食う。
腹減ってる時につけ麺屋を見ると、花にとまるミツバチのように、草木が水を求めるように、ギャル男が渋谷のセンター街に吸い込まれるように、入店してしまう。そこに意識はない。





つけ麺の何が好きかと言うと、まず麺類である。オタクは俺含め麺類が好きという生態があるため、体に馴染む。麺を啜り、咀嚼する時のみ生を実感する。


そしてあの味の濃さ。基本的に俺は濃い味がめちゃめちゃ好きだ。小さい頃、味噌を狂ったように指ですくいそのまま食っていた。

つけ麺はご存知の通りつけ汁に麺を少しくぐらせて食べるから、必然的につけ汁は味が濃くなくてはならない。それが良い。味が濃いものを食べている時のみ生を実感する。ちなみにつけ汁は麺を食い終わった後、割りスープ無しで飲み干す。

前につけ汁がうっっすいつけ麺を食ったことがあるが、あんなものはただの麺とスープが分離したラーメンである。
味が濃い汁につけてこそのつけ麺だと思っている。







しかし、俺が幸せにつけ麺を貪っている時間は長くは続かない。







俺は小麦の味ががっつり感じられる麺が好きじゃない。味噌系ラーメンに時々見られる、あのワシワシ食う感じの麺は嫌いである。
つけ麺はほとんどの場合太麺である。ワシワシ食うタイプ程ではないが、小麦の味が結構来る。結構来るように作られている。


最初は美味ェ美味ェと勢いよく食うが、後半戦になると裏で溜められていた小麦ゲージが爆発し、結果失速する。



さらに、つけ麺の麺というのは腹の中で水分を吸って体積が増えるものである。俺は胃がクソザコの人間だから、食い終わると満腹感で死にそうになっている。そして気を紛らわそうと水を飲みまくる。すると余計死にそうになる。


ここまで分かっていながら、またつけ麺屋に入ってしまう。どういうことなのか?







そう、つけ麺とは「麻薬」なのである。


最初に多幸感に包まれるが、後半に必ず牙を剥く。苦しくなることが分かっていながら、最初の多幸感を求めてつけ麺を頼む。人々はそれを繰り返す。これはどう考えても麻薬である。俺も気付いた時には遅かった。

何故こんなものを社会は許しているのか?何故悪びれることもなく、お気楽に朝のニュースで特集されるのか?未だガキの俺には分からない。




ただ一つ分かる事は、今後も俺はつけ麺を食うことだけである…(暗転してスタッフロール)